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fashion topics 1「コレクション発表と購入までに起きるタイムラグの是非」


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気になるファッションニュースをfashion topicsとして取り上げ、ブランドの情報などを取り混ぜながら独自の見解で解説していきます。
今回のfashion topicsは「コレクション発表と購入までに起きるタイムラグの是非」についてです。


「コレクション発表と購入までに起きるタイムラグの是非」


当ブログのロンドン・メンズコレクション 2016-17FW バーバリーでも触れたが、ファッション業界ではコレクション発表と実際に販売されるまでの期間が現代のSNSなどが発達したデジタル社会に適応していないのではないかという議論が出ている。

BURBERRY,バーバリー
BURBERRY
photo by
https://jp.burberry.com/our-history/#/heritage/heritage-2010-13

バーバリーは2016年秋冬コレクションから、これまでの「ブリット」「ロンドン」「プローサム」を統合し、ランウェイもこれまでの年4回(ウィメンズの春夏・秋冬、メンズの春夏・秋冬)を年2回(ウィメンズとメンズを一本化)になり、コレクション発表直後から販売を開始していくとのこと。
トム・フォードも2016年秋冬からコレクション発表を商品の販売時期に合わせて行うと公式サイトで公表しており、マイケルコースは今回の2016-17秋冬コレクションで発表直後に買うことができるカプセルコレクションを発表。

米国ファッション評議会(CFDA)は公式サイトで、ボストンコンサルティンググループとニューヨーク・ファッション・ウィークについて再検討していくことを発表しており、消費者に販売されるまでの期間、現在のファッション・ウィークの妥当性を問題視したもので今後の動向が待たれる。

コレクション発表と販売されるまでのタイムラグについて

一般消費者にとっては、これまでブランドのコレクション発表から実際に商品を手にできるまで半年から下手をすると約10ヶ月くらいのタイムラグが発生している。
仮にコレクション発表からすぐ商品を購入できるようになると非常にメリットが高い。コレクションを見て気に入った商品を気持ちも高まっている状態で即座に購入でき着用できることは、ファッションを愛する人たちには格別であろう。日本にいながらにしてパリやミラノで発表されたコレクションピースを翌日に着ることができるのである。
これまでのタイムラグだとコレクションが発表されてから早くても半年くらいに購入、しかも実際に着られる季節までさらに寝かせておかなければならないことも多いだろう。
例えば今回の秋冬メンズコレクションの場合、まず1月にコレクション発表されるが、6〜7月に入荷してくる秋冬商品はプレシーズンの商品である場合が多くコレクションの商品ではない。
実際に日本国内にコレクションの商品が入ってくるのは各ブランドにもよるが、8月下旬〜10月上旬くらいがメインであろうかと思う。さらに冬物のアウターを買った場合、特に関東以南で実際に着用する気候まで考えると、買ってからもさらに自宅で寝かせておくような状況になり、実際にコレクションを見てからの時間を考えると非常に待たされた感覚になる。
そしてコレクション発表の時期に直接関係はないかもしれないが、1月になりせっかくプロパーで買った商品がセールになってしまった時には何とも言い難く、目も当てられない気持ちになってしまう。

コレクション発表直後の販売によるファッション的なメリット

前項のすぐに購入できる以上の、もっと大きなメリットがあるのではないかと考えられる。
コレクション発表と同時に販売されるということは、世間一般に対してコレクションにインスピレーションを受けた商品、悪く言うとコピー品が出回るタイミングが一定期間失われることである。
日本国内に多くのブランド・オリジナル商品を販売しているセレクトショップがあるが、その大部分はパリやミラノ、今回のロンドンコレクションなどのランウェイショーで発表されるデザインを実際に参考にしている。
前項で述べた通り、コレクション発表から実際に商品が販売されるまで半年以上のタイムラグがあるため、コレクションを参考にしているブランド・企業は容易にデザインを起こすことができる。
実際に販売するシーズンまで時間的な余裕もある為、容易に生産することができ、コレクション発表しているブランドと同時に店頭に並べることが可能である。デザインは良くも悪くもこなれた感じになっているケースが多い。
結果、高いブランドも安いブランドもさらにはファストブランド・セレクトショップなどで、トレンド性の高い商品であるほど、ほぼ同時に同じような商品が店頭に並ぶことになり、詳しく知らない方にとっては全く同じと感じてしまう。
そして、ハイブランドを着用していてよく言われがちな「もっと安く同じデザインの奴が◯◯(ショップ名)にあったよ。わざわざ高いブランド物を買う意味がわからないわ。」みたいなことが起きてしまう。
コレクション発表直後から商品を販売し購入できるシステムは、これまでより上記のような状況を大きく避けることができるようになり、実際の運営面では色々な問題が発生すると思われるが、本当の意味で「デザインを創作する」ということの価値が高まると言えるのではないだろうか。

ファッションをより楽しめる効果

コレクション発表直後から購入できることになると、消費者にとってはブランドそのもののトレンドやファッションを純粋に楽しめる期間が増えるのではないだろうか。
コレクションを発表しているラグジュアリーブランドは概ね価格としては高価であるが、これまでのようにコレクション発表から実際の販売時期のタイムラグがある場合は「流行」がある程度追いついてきてしまい、トレンド性の高いブランドやアイテムは陳腐化しやすくなり費用対効果という点であれば非常に悪くなってしまう。
しかしコレクション発表と同時に販売するというシステムが厳密に守られるのであれば、これまでランウェイのコレクションにインスピレーションを受けて商品開発していたブランド・企業がトレンドの流れを察知し実際に商品に落とし込むまでの時間はかかる上、特にトレンドを即座に取り込むという点で厳しいのではないだろうか。例外的としてZARAのように即座に商品開発できる企業はあるが、現状の日本国内のアパレル商社などは厳しいかと思われる。

コレクション発表直後からすぐに販売されるような状況になれば、トレンドに敏感で裕福な消費者、またはファッションが好きで可処分所得の大部分をファッションにかける消費者ほど、これまでよりもよりファッションを楽しめる環境となりえるかもしれず、さらに費用対効果で考えても以前よりは購入してから長い期間楽しめるようになるかもしれない。


今回のfashion topicsについて

コレクション発表直後からの販売については否定的なブランド・デザイナーもいる中、このような流れは多かれ少なかれ進んでいくと思われるが、まずは2016年秋冬シーズンでどのような結果になっていくのかが大きなポイントになってくるだろう。